海外駐在や海外移住をすると、意外と困るのが「日本の手続き」です。
日本に住んでいるときは、
「役所に行けばいい」
で済んでいたことが、海外に住むと、
「日本に帰らないと手続きできない?」
「戸籍謄本はどうやって取る?」
「確定申告は海外からできる?」
「運転免許の更新は?」
「マイナンバーカードは海外でも使える?」
と、一気に面倒になります。
しかし、現在は制度が大きく変わっています。
2024年5月27日から、日本国籍者は国外転出後もマイナンバーカードを継続して利用できるようになりました。
さらに2026年5月26日からは、海外在住者が国外転出者向けマイナンバーカードをオンラインで申請できるようになっています。
つまり、海外在住者にとってマイナンバーカードは、
「日本に住んでいる人のためのカード」ではなく、「海外に住みながら日本との行政手続きをつなぐデジタルID」
になりつつあります。
では、実際に海外在住者は何ができるのでしょうか?
まず結論|海外在住者にとって何が便利になる?
海外駐在員・海外在住者にとって、特に重要なのは次の6つです。
| 分野 | 海外在住者にとってのメリット |
|---|---|
| 📄 戸籍 | 日本に帰国した際、条件を満たせばコンビニで戸籍謄本等を取得できる |
| 💰 税金 | マイナンバーカードを使ってe-Taxを利用できる |
| 📱 行政 | マイナポータルなど、日本の行政サービスをオンラインで利用できる |
| 🏦 公金 | 海外から公金受取口座を登録・管理できる |
| 🏥 保険 | 日本の健康保険資格がある人はマイナ保険証を利用できる |
| 🚗 免許 | 海外滞在中の免許更新やマイナ免許証などの制度を利用できる |
特に海外駐在員にとって重要なのが、
「戸籍」「税金」「行政手続き」
の3つです。
海外に住んでいると、日本の役所に行くこと自体が大きな負担になります。
マイナンバーカードは、その負担を減らすための「日本との接点」と考えると分かりやすいでしょう。
そもそも、海外に住むとマイナンバーカードはどうなる?
ここが以前と大きく変わったポイントです。
以前は、日本から海外へ転出するとマイナンバーカードが失効する仕組みでした。
現在は、日本国籍者であれば、国外転出時に必要な手続きをすることで、国外でもマイナンバーカードを継続利用できます。
さらに、2015年10月5日以降に国外転出した日本国籍者で、まだマイナンバーカードを持っていない人も、国外転出者向けカードを新規申請できます。
そして2026年5月26日からは、その申請自体がオンライン化されました。
これは海外在住者にとってかなり大きな制度変更です。
① 戸籍謄本|「海外に住んでいても戸籍は取れる?」
海外在住者にとって、これはかなり気になるポイントではないでしょうか。
例えば海外駐在中に、
- 日本の不動産を購入する
- 相続手続きをする
- 結婚・離婚関連の手続きをする
- 子どもの手続きをする
- 金融機関から戸籍謄本を求められる
といったことが起きる可能性があります。
そんなときに便利なのがコンビニ交付です。
本籍地の自治体などが対応していて、必要な手続きを済ませていれば、日本国内のコンビニ等にある端末から戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)や戸籍個人事項証明書(戸籍抄本)などを取得できます。
つまり、
海外在住
↓
一時帰国
↓
役所ではなくコンビニへ
↓
戸籍謄本を取得
ということが可能になる場合があります。
ただし、本籍地の自治体が対応していることや、必要な利用登録などの条件があります。
「海外にいるから戸籍謄本を取得できない」というわけではない
ということを覚えておきましょう。
② 確定申告|海外から日本の税務手続きができる
海外駐在員にとって、もう一つ重要なのが税金です。
「海外に住んでいるから、日本の確定申告は関係ない」
とは限りません。
例えば、
- 日本国内の不動産所得
- 日本国内の所得
- 株式・配当など
- 帰国した年の所得
- その他、日本で課税対象となる所得
などがあれば、日本で税務手続きが必要になる場合があります。
その際に便利なのがe-Taxです。
現在は、マイナンバーカード方式を使ってe-Taxへログインし、申告データを送信できます。
さらに、マイナポータルとe-Taxを連携することで、給与所得の源泉徴収票などの情報を取得し、確定申告書へ自動入力する機能もあります。
海外駐在員にとっては、
「日本に帰国しないと確定申告できない」
という時代から、
「海外からオンラインで日本の税務手続きをする」
という選択肢ができているわけです。
ただし、海外転出によって税務上の居住者・非居住者の扱いが変わるため、マイナンバーカードを持っていることと、日本で確定申告が必要かどうかは別問題です。
③ マイナポータル|海外在住者にとって「日本の行政窓口」になる
海外に住んで一番不便なのは、
「日本の行政手続きをしたいのに、日本にいない」
ということです。
そこで重要になるのがマイナポータルです。
マイナンバーカードを本人確認の手段として使うことで、税・社会保障・公金など、さまざまな行政サービスをオンラインで利用できます。
海外在住者にとっては、
「日本の役所に行く」
という行動を、
「オンラインで確認・申請する」
方向へ変えていくための入口になります。
もちろん、すべての行政手続きが海外から完結するわけではありません。
しかし、今後日本との行政上の手続きが必要になったとき、マイナンバーカードを持っているかどうかで選択肢が大きく変わることは間違いありません。
④ 公金受取口座|海外在住でも登録できる
意外と知られていないのが、公金受取口座です。
公金受取口座とは、国から給付金などを受け取るための預貯金口座を、あらかじめ登録しておく制度です。
そして現在は、国外転出している人でも、国外転出者向けマイナンバーカードを持っていれば、マイナポータルから公金受取口座を登録できます。
海外に住んでいても、日本との金銭的な行政手続きが発生する可能性はあります。
「海外に住んでいるから、日本の行政サービスとは無関係」
ではないことが分かります。
⑤ マイナ保険証|海外駐在員は「健康保険資格」に注意
マイナンバーカードは健康保険証としても利用できます。
ただし、ここは注意が必要です。
海外在住者なら誰でもマイナ保険証を使えるわけではありません。
ポイントは、
日本の健康保険の資格を持っているか
です。
例えば日本企業の海外駐在員でも、社会保険の加入状況は個人の勤務形態などによって異なります。
一方、海外現地法人へ転籍して日本の健康保険資格がなくなっている場合などは、日本のマイナ保険証を使えるわけではありません。
したがって、
「海外に住んでいるか」ではなく「日本の健康保険資格があるか」
で判断する必要があります。
現在、日本の従来の健康保険証は廃止され、医療機関では原則としてマイナ保険証または資格確認書を利用します。
⑥ 運転免許|海外駐在員が忘れてはいけないこと
海外駐在員にとって、地味に重要なのが運転免許です。
海外勤務中に、
「日本の免許の更新時期が来てしまった!」
ということは珍しくありません。
警察庁では、海外滞在者について、更新期間中の一時帰国や、更新期間前の更新、免許失効後の手続きなどについて特例を設けています。
また、2025年3月24日からはマイナ免許証も始まりました。
ただし、
マイナンバーカードを持っているだけで自動的にマイナ免許証になるわけではありません。
マイナンバーカードと運転免許証は別の制度として考える必要があります。
海外駐在員は、赴任前に「次の免許更新はいつなのか」を確認しておくと安心です。
海外在住者が勘違いしやすい「できる・できない」
ここまでをシンプルにまとめると、こうなります。
| 手続き・サービス | 海外在住者 | ポイント |
| マイナンバーカード | ○ | 国外転出後も継続利用可能 |
| マイナポータル | ○ | 国外転出者向けカードを利用 |
| e-Tax | ○ | 日本で申告義務がある場合などに利用 |
| 公金受取口座 | ○ | 国外転出者も登録可能 |
| 戸籍謄本 | ○ | 条件を満たせばコンビニ交付等が可能 |
| 戸籍抄本 | ○ | 条件を満たせば取得可能 |
| 住民票 | 原則× | 国外転出すると日本の住民票がなくなる |
| マイナ保険証 | △ | 日本の健康保険資格が必要 |
| 運転免許 | ○ | 海外滞在者向けの特例あり |
| マイナ免許証 | △ | 別途手続きが必要 |
ここで特に覚えておきたいのが、
「戸籍」と「住民票」は違う
ということです。
海外に転出すると日本国内の住民票は原則なくなります。
一方、日本国籍者の戸籍は海外に住んでもなくなるわけではありません。
そのため、
「海外に住んでいるのに戸籍謄本は取得できる」
という、一見すると不思議なことが起こります。
海外駐在員なら、赴任前にこの5つを確認
これから海外赴任する人は、マイナンバーカードについて最低限、次の5つを確認しておきましょう。
① 国外転出後もマイナンバーカードを利用できる状態にする
国外転出時に必要な手続きを確認しましょう。
② 電子証明書の有効期限を確認
e-Taxやマイナポータルなど、オンライン手続きでは電子証明書が重要です。
③ 本籍地の戸籍証明書の取得方法を確認
コンビニ交付に対応しているか確認しておくと、帰国時に便利です。
④ e-Taxを使える状態にしておく
海外赴任後に日本で確定申告が必要になったときに備えて、早めに準備しておくと安心です。
⑤ 運転免許の更新時期を確認
海外滞在期間と免許更新時期が重ならないか確認しておきましょう。
まとめ|マイナンバーカードは「海外に住むから不要」ではない
海外駐在や海外移住をすると、
「日本に住んでいないのだから、マイナンバーカードは必要ないのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、現在の制度ではむしろ逆です。
海外に住んでいるからこそ、
「日本に帰らずに、日本の手続きをできる」
ことの価値が高くなります。
戸籍を取得したい。
日本の税金を申告したい。
行政情報を確認したい。
公金を受け取りたい。
日本の健康保険を利用したい。
運転免許を管理したい。
こうした場面で、マイナンバーカードが日本との接点になります。
そして2026年5月からは、海外在住者向けマイナンバーカードのオンライン申請まで始まりました。
これから海外駐在する人、すでに海外に住んでいる人にとって、
マイナンバーカードは「日本を離れるから不要になるもの」ではなく、「日本を離れても日本との行政上のつながりを維持するためのカード」
と考えると、その重要性がよく分かります。
海外生活を始める前に、ぜひ一度、自分のマイナンバーカードが海外でどこまで利用できる状態になっているか確認してみてください。
参考にした主な公的情報
本記事では、制度の正確性を重視し、主に以下の政府・公的機関の情報を参照しています。
- マイナンバーカード総合サイト|マイナンバーカードを国外で利用する
- マイナンバーカード総合サイト|国外転出者向けオンライン申請
- マイナンバーカード総合サイト|国外転出者向けカードの新規交付
- コンビニ交付|地方公共団体情報システム機構
- 国税庁|e-Tax
- 国税庁|マイナンバーカードを利用したe-Tax
- デジタル庁|公金受取口座
- 厚生労働省|マイナ保険証
- 警察庁|海外滞在中の運転免許
※制度は変更される可能性があります。実際に手続きを行う際は、各省庁・自治体の最新情報をご確認ください。

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