フィリピンで子どもをインターナショナルスクールなどに通わせていると、ある日突然、
Walang Pasok
という連絡が学校や自治体から届くことがあります。
「今日は学校がありません」という意味ですが、日本からフィリピンに来たばかりの家庭にとっては、これがなかなか慣れません。
朝起きて、「今日は学校の日だったはずなのに……」
と思っていたら、突然休校。
しかも、仕事や用事は普通にある。子どもは家にいる。さらに「明日はどうなるの?」となる。
フィリピン生活を始めたばかりだと、かなり戸惑うと思います。住み込みのヤヤ(メイド)がいる家庭であればいきなりの対応も可能かもしれませんが、通いのヤヤの場合時間帯が合わないことも。
しかし、フィリピンで暮らしていると、Walang Pasokは決して珍しいものではありません。
むしろ、台風や大雨の多いフィリピンでは、ある程度想定しておいたほうがよい「学校生活の一部」です。
この記事では、フィリピン、特にマニラ首都圏・Taguig周辺で、
- Walang Pasokとは何なのか
- なぜ突然学校が休みになるのか
- いつ休校になりやすいのか
- 年間で何日くらい休校になるのか
- 過去にはどのくらい休校になったのか
- 日本人家庭はどう考えておけばよいのか
をデータとともに紹介します。
Walang Pasokとは?
まず「Walang Pasok」という言葉から。
**Walang Pasok(ワラン・パソック)**は、フィリピンでよく使われる「授業がない」「学校が休み」という意味の表現です。
英語では、
Class Suspension / Class Cancellation
などと表現されます。
フィリピンのニュースサイトでは、台風などが近づくと、
WALANG PASOK
という見出しで、地域別に学校の休校情報が掲載されます。
SNSを見ていると独自にどこが休校なのかをまとめている方までおります。
つまり、日本でいう「臨時休校」に近いものです。
なぜフィリピンでは突然学校が休みになるのか?
最大の理由は、やはり天候です。
フィリピンには日本とは違うレベルで、台風・大雨・洪水があります。
気象庁に相当するフィリピンの政府機関が、PAGASAです。
PAGASAによると、フィリピンでは一般的に6月~11月が雨季、12月~5月が乾季です。
さらに熱帯低気圧・台風は年間を通じて発生する可能性がありますが、特に7~10月が台風シーズンのピークです。PAGASAによると、フィリピンの管轄海域には年間平均約20個の熱帯低気圧が入り、そのうち約8~9個がフィリピンを通過します。
そのため、6月~11月は学校の休校リスクが高くなります。
特に、7月~9月は注意しておきたい時期です。
「雨が降ったら休校」ではない
ここは日本人にとって少し分かりにくいところです。
フィリピンでは、単純に「雨が降っているから休校」というわけではありません。
台風、大雨、洪水、強風、地震、火山、極端な暑さ、大気汚染など、子どもの安全に影響する可能性がある場合に授業が停止されることがあります。
DepEd(フィリピン教育省)は2024年に休校ガイドラインを改訂し、
- 台風・熱帯低気圧
- 大雨・洪水
- 地震
- 停電
- 極端な暑さ
- 大気質の悪化
- その他の災害・緊急事態
などを対象にしています。
つまり、
「今日は雨が強いから学校が危ない」
という判断だけではなく、通学そのものの安全性を考えて休校になるわけです。
特に注意したいのが「Habagat」
フィリピンのニュースを見ていると、
Habagat
という言葉が頻繁に出てきます。
これは**Southwest Monsoon(南西モンスーン)**のこと。
日本人には馴染みがありませんが、マニラ生活では非常に重要な言葉です。
Habagatによって、台風そのものがマニラを直撃していなくても、大量の雨が降ることがあります。
PAGASAによると、Habagatは通常5月末~6月頃から始まり、9月末~10月頃まで続きます。西部ルソンではこの時期に大雨が発生しやすくなります。
そのため、
「台風はマニラに来ていないのに、なぜ学校が休みなの?」
ということが普通に起こります。
例えば2024年7月24日には、台風Carinaによって強化されたHabagatの影響でルソン各地に大雨が続き、Metro Manilaでも休校措置が発表されました。
では、実際に年間何日くらい学校が休みになるのか?
ここが一番気になるところでしょう。
結論からいうと、
Taguig(BGCがある地域)を中心としたMetro Manilaでは、通常の年で年間2~4日程度、多い年では5~8日程度の臨時休校が発生する、と考えておくとよいでしょう。
そして、台風や洪水が特に多い年には、
年間8~10日以上
になることもあります。
ただし、これは「毎年必ず○日」という公式統計ではありません。
過去のニュース、自治体、DepEd、GMA Newsなどで確認できる休校記録を積み上げたものです。
BGC(Taguig)の過去のWalang Pasok
特に日本人駐在員が多く暮らすBGCを含むTaguigについて、確認できた過去の記録を整理すると、次のようになります。
Taguig City:年間休校日数の目安
| 年 | 確認できた休校日数の目安 | 主な理由 |
|---|---|---|
| 2006 | 1~3日以上 | 台風・洪水 |
| 2007 | 約3日 | 豪雨・台風 |
| 2008 | 1日程度 | 豪雨・洪水 |
| 2009 | 3日以上 | Kiko・Ondoy |
| 2010 | 1日程度 | 台風 |
| 2011 | 約2日 | 台風・豪雨 |
| 2012 | 6~7日以上 | Habagat・洪水 |
| 2013 | 8~9日以上 | Habagat・台風・洪水 |
| 2014 | 約3日 | 台風・豪雨 |
| 2015 | 2日以上 | 台風・Habagat |
| 2016 | 約2日 | 台風・Habagat |
| 2017 | 約2日 | 地震・豪雨 |
| 2018 | 4~5日 | Habagat・台風 |
| 2019 | 約6日以上 | 台風・豪雨 |
| 2020 | COVID-19のため別集計 | Taal・COVID-19 |
| 2021 | COVID-19のため別集計 | COVID-19 |
| 2022 | 0.5日以上 | Habagat |
| 2023 | 約3~4日 | 台風・Habagat等 |
| 2024 | 6~8日程度 | 台風・Habagat・大雨 |
| 2025 | 7~10日程度 | 台風・Habagat等 |
| 2026 | 8月13日時点で約2~3日 | Habagat等 |
※古い年代はオンライン上の休校記録が完全に保存されていないため、確認できた記録をもとにした目安です。また、午後休校や一部学年のみの休校を含む場合があります。
グラフで見ると分かりやすい
Taguigについて、特に記録が比較的充実している年代を見ると、次のようなイメージになります。
Taguig City:年間Walang Pasok確認日数
2012 ██████ 6~7日
2013 ████████ 8~9日
2014 ███ 約3日
2015 ██ 2日+
2016 ██ 2日
2017 ██ 2日
2018 ████ 4~5日
2019 ██████ 6日+
2020 COVID-19 ※通常集計外
2021 COVID-19 ※通常集計外
2022 ▌ 0.5日+
2023 ███ 3~4日
2024 ██████ 6~8日
2025 ███████ 7~10日
2026 ██ 2~3日*
*2026年は8月13日現在。
このグラフを見ると分かるように、「毎年10日も学校が休みになる」というわけではありません。
むしろ、2~4日程度の年が中心で、天候が荒れた年に一気に増えるというのが実態に近いです。
特にすごかった2012年と2013年
過去のデータを見ると、2012~2013年はかなり特殊でした。
2012年8月にはHabagatによる大規模な洪水が発生。
Taguigでも、
- 8月6日
- 8月7日
- 8月8日
- 8月9日
- 8月10日
- 8月13日
など、複数日にわたって休校が発生しました。
8月8日にはMetro Manila全体で大規模な休校となり、Taguigも全レベルが対象となっています。
さらに8月10日にはTaguigが災害地域に指定されるほどの洪水になりました。
つまり、この時期は、
「明日だけ学校が休み」
ではなく、
「今週は何日学校に行けるんだろう?」
という状態だったわけです。
2013年もかなり多かった
2013年8月にもHabagatや台風Maringなどによって大雨が続きました。
Taguigでは、
- 8月19日
- 8月20日
- 8月22日
- 8月23日
など複数日にわたって休校が確認されています。
さらに9月や11月にも休校が発生しています。
そのため2013年は、年間8~9日程度の休校が確認できる非常に多い年でした。
最近もWalang Pasokは決して減っていない
「昔は台風が多かったけど、最近は少なくなったのでは?」
と思うかもしれません。しかし、最近の記録を見てもそうとは言えません。
例えば2019年には、
- 7月1日
- 8月3日
- 8月5日
- 8月9日
- 9月16日
- 12月3日
- 12月4日
など、Taguigで複数の休校が確認されています。
7月1日は午後授業のみ休止。8月3日はTaguigの全レベルが休校。
8月5日もTaguigで全レベルが休校。8月9日は公立・私立ともに全レベルが休校。
9月16日もTaguigで全レベル・公立私立が対象となっています。そして12月3~4日にも台風Tisoyの影響で休校が続きました。
2024年もかなり多かった
2024年も、
- 5月:Typhoon Aghon
- 7月:Carina+Habagat
- 8月:大雨
- 9月:台風Enteng等
- 10月:Severe Tropical Storm Kristine
などで休校が発生しています。
例えば5月27日には、Taguigでpreschool~Senior High Schoolの公立・私立が休校となりました。
8月28日にもTaguigの全レベルが休校。そして10月24日、25日にはSevere Tropical Storm Kristineの影響でTaguigを含むMetro Manilaの多くの地域で全レベルが休校になりました。
「突然の休校」にイライラしないために
ここは、フィリピンで子育てする日本人家庭に一番伝えたいところです。
日本の感覚でいると、
「なぜ前日の夜になって突然?」
と思ってしまいます。
あるいは、
「仕事の予定があるのに……」
となります。
これは当然だと思います。
特に共働き家庭の場合、子どもの学校が突然休みになると、親の仕事にも影響します。
ただ、フィリピンの場合は少し考え方を変えたほうが楽です。
「学校が休む」のではなく「安全を優先している」と考える
台風や洪水のときに学校を休みにする最大の理由は、
子どもを危険な状態で通学させないためです。
特にMetro Manilaでは、雨そのものより、道路の冠水 → 渋滞 → 通学時間の長時間化
が問題になることがあります。朝は何とか学校まで行けても、
「帰宅時間には道路が冠水している」ということもあり得ます。
そのため、
「ちょっと雨が降っただけなのに」
と思うような日でも、学校側からすると、
「帰宅時の安全まで考えて休校にする」
という判断になります。
しかも「休校=何もしない」とは限らない
もう一つ知っておきたいのが、休校=完全に勉強がなくなる
とは限らないことです。
近年のDepEdのガイドラインでは、災害によって授業が停止された場合でも、学習を継続するために、
- オンライン授業
- モジュール
- 課題
- Alternative Delivery Modes
- make-up classes
などを利用する考え方が示されています。
つまり、
「学校に行かない日」と「勉強をしない日」は必ずしも同じではありません。
これはCOVID-19を経験したフィリピンの教育現場では、特に重要になった考え方です。
そして、インターナショナルスクールは少し事情が違う
ここも駐在家庭は注意が必要です。
DepEdやLGUが休校を発表したからといって、
すべてのインターナショナルスクールが全く同じ対応をするとは限りません。
学校によって、
- 完全休校
- オンライン授業
- asynchronous learning
- 午前だけ休校
- 学校独自判断
- 通常授業
など対応が異なる場合があります。
実際、近年の休校情報でも、地域によって「face-to-faceのみ停止してオンライン授業は継続」というケースが確認されています。2024年4月には高温を理由に、複数のMetro Manilaの学校が対面授業をオンライン・非同期型に切り替えています。
そのため、
「TaguigがWalang Pasokだから、子どもの学校も必ず休み」
と考えるのではなく、
最終的には学校からの連絡を確認することが大切です。
いつ休校に備えておけばいい?
一番覚えておきたいのは、フィリピンの雨季は6~11月。
そして、PAGASAによると、台風シーズンのピークは7~10月であり、7〜9月はHabagatによる大雨も重なり安い時期となります。
日本人家庭なら「休校前提」で少しだけ準備しておくと楽
だからといって、毎日「明日は休校か?」と心配する必要はありません。
おすすめなのは、
「年間数日は突然休校になるもの」と最初から考えておくこと。
1. 学校の連絡アプリをすぐ確認できるようにする
Walang Pasokは非常に早いタイミングで発表されることがあります。
学校のメール、WhatsApp、Viber、Facebookなど、自分の学校が使っている連絡手段を確認しておきましょう。
2. 台風シーズンは予定を詰めすぎない
特に7~10月は、「この日は絶対に学校がある」と考えすぎないほうが楽です。
3. 自宅で過ごせる準備をしておく
突然休校になっても、
- 読書
- 勉強
- オンライン学習
- 映画
- 工作
- 家庭でできる遊び
などを用意しておけば、それほど困りません。
4. 親の仕事についても「予備プラン」を作る
共働き家庭なら、こちらのほうが重要かもしれません。
「学校が休みになったら誰が子どもを見るのか」をあらかじめ決めておくだけで、突然のWalang Pasokに対するストレスがかなり減ります。
結局、フィリピンでは年間何日くらい休校する?
今回、Taguigの過去約20年間の記録を調べてみた結果。
| 状況 | 年間のWalang Pasok |
|---|---|
| 少ない年 | 0~2日 |
| 普通の年 | 2~4日程度 |
| やや多い年 | 5~6日 |
| 天候が荒れた年 | 7~10日程度 |
| 特に異常な年 | 10日以上 |
| COVID-19 | 通常の休校とは別扱い |
つまり、
「年間4日前後は臨時休校になる可能性がある」
くらいに考えておくと、現実に近いと思います。
年間180~200日前後の授業日があると考えれば、通常年なら授業日の約2%程度です。
毎週のように学校が休みになるわけではありません。
ただし「年間4日」と考えるだけでは不十分
休校が均等に発生するわけでく、
例えば、
1月:0日
2月:0日
3月:0日
4月:0日
5月:1日
6月:0日
7月:2日
8月:3日
9月:1日
10月:1日
11月:0日
12月:0日
というように、特定の時期に集中します。
つまり、
「年間4日休む」
というより、
「7~10月に突然休校が何度か発生する」
と考えたほうが、フィリピンで暮らす感覚に近いでしょう。
まとめ:Walang Pasokは「フィリピン生活の一部」
フィリピンで暮らし始めたばかりだと、突然のWalang Pasokには戸惑うと思います。
特に、
「今日は仕事なのに」
「急に休みになって困る」
「昨日まで普通に学校だったのに」
という気持ちは、日本人としては当然です。
ただ、過去のデータを見てみると、Walang Pasokはフィリピンの学校生活において決して珍しいものではありません。
Taguigを例にすると、
通常の年で年間2~4日程度。
天候が悪い年には、
5~10日程度。
そして2012~2013年のような異常気象の年には、それ以上になることもあります。
一方で、フィリピン政府も近年は災害時の学習継続を重視しており、休校時にオンライン授業や別の学習方法へ切り替える仕組みも整備されています。
だから、フィリピンで子育てをするなら、
「Walang Pasok=予定外のトラブル」
と考えるより、
「フィリピンの雨季には、年間数回こういう日がある」
くらいに考えておくのがおすすめです。
そうすると、朝突然スマートフォンに届く
「Walang Pasok today」
というメッセージを見ても、少し余裕を持って受け止められるようになります。
そして何より、
休校になった日は、子どもと一緒にフィリピンで過ごせるもう一つの休日
くらいに考えてしまうのも、海外生活を楽しむ一つの方法なのかもしれません。
参考情報
フィリピンの気象・休校については、以下を定期的に確認すると便利です。

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